Category詩 1/3

死の感触。

あの世をたっぷりと含んだ空気がいやな臭いを漂わせこの部屋に流れ込んでいるああ――この部屋のものたちが呻きながら湿り気を帯びていく賞味期限切れの私の身体とおんなじで湿気たフライドポテトのなんという味気の悪さ死の感触とはきっとこんなものなのかも知れない※心配をお掛け致しました。入院はせず自力で頑張っております。...

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後悔の涙(母を偲んで)。

母は安らぐ場所にたどり着いたのか苦しまずに逝ったのか痛みはなかったのか毒を飲む瞬間何を考えていたのか僕のことを想い出しただろうか母の通夜にも立ち会えず最後の母の顔も見届けず火葬にも出席出来なかった僕は幼すぎたのか母の死を知らされた時他人事と思えた僕の心は余りにも冷たかった今になって後悔の涙が僕の心を掻き乱すあなたに会いたかったどんな形でもよいから会いたかったこの僕を産んでくれたあなただもの※9月8...

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七夕物語り。

七夕の夜天の川を小舟で渡っていると星が一人で泣いていたはぐれたあの娘を追いかけて流れの中で迷ったのこのまま何処まで行ったとて涙あふれる天の川星の渦巻き 闇の中 夜に紛れて消えた星お空はとっても広すぎてあの娘を探し切れないのせめて今宵の星空だけはあの娘と一緒の天の川願いを込めて祈ります...

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野に咲く花のように。

野に咲く名もない花のように風に吹かれ 雨に打たれ凍てつく雪の日にも土の温もりを友としてけなげに咲くことを諦めないそんな花のような存在になりたい野に咲く名もない花のように人生という大地に根を張り揺るぎない意志と情熱を持ちうろたえることもなく一心に咲き続けるそんな花のような存在でありたい...

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祭りで賑わう夜(詩集・天国の地図より)。

祭りで賑わう夜父は病床に寝たきりの身体を起こして息子の帰りを独り静かに待っていた外は祭りの熱気で溢れているのにか細くやせ衰えた肩や手が息子を呼んでいるのに今夜には帰り筈の息子は夜更けまで何処かで遊び惚けている祭りの太鼓も父の胸には悲しく響くだけ帰らぬ息子を想っているのか自分の憐れさを悲しんでいるのか隙間風が枕元を通り過ぎて祭りも終わりを告げるようだった※末期の肝硬変で余命いくばくもない父から呼出さ...

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桜のプラネタリウム。

満天の空を泳ぐように舞い散るそれは桜のプラネタリウム遠い記憶の向こうで微笑んだあなたの眼差し今年もあなたの心に桜は満開ですか...

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雪の花びら(未刊詩集より)。

雪の花びらみなもに消えて池のさざなみ凍えさすお魚じっと我慢して春の来るのが待ち遠しい小舟の上では釣り人が糸をたらして夢を見る雪の花びらみなもに解けて春を待つ夢凍えさす...

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父に捧げるレクイエム。

深まる秋がこの蒼い空一杯に拡がりあなたの散ったあの日を僕はいつもあの時のままで想い出すたなびく煙は風に乗りあなたの魂を高い高い空へと連れて行く悔しさと海のように深い悲しみを苦し紛れの笑顔で隠しわずか42年の生きざまを18歳の少年に凡て託してこの世を去った煽った酒の数だけ涙を流し酔えば酔うほど母の面影が募ったのでしょうね幼い僕は母に似ていつもあなたを悩ませただから酒にまみれて自分を誤魔化して来たので...

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ひとりかくれんぼ(不登校の頃に)。

見つけてくれる鬼のいない街外れの小さな公園で僕はいつもひとりかくれんぼもういいかい まあだだよそれを何度も繰り返す遠くで下校時間のチャイムがキンコンカン終わりの見えないひとりかくれんぼ僕はいつまでたっても帰れない――...

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点滴の流れる音に。

点滴の流れる音に耳を澄ましてごらんほら 聞こえてくるよポトン ポトン一滴ずつ 確実に命に 栄養を与えているポトン ポトンほら 見てごらん命が 少しずつ膨らんでいくのを※入院中ではありません(^_^;)...

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僕の卒業式(未刊詩集より抜粋)。

遠くで桜の花びらが舞っていたその下で春の木漏れ日あびながら笑顔にあふれた卒業写真僕は 一人病室でベッドの温もり 抱きしめた近くて近くて 遠い春僕の卒業式はまだ 来ない※天竜養護学校の桜と恩師と後輩たち(1971年4月頃)。...

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埋葬(オカメインコのクックに捧げる)。

夜が深い悲しみを連れて降りて来たやがて訪れる明日が君にはもう来ない冷たい君と悲しみを土に帰す時が来るもう二度と大空へ羽ばたかない羽根は硬く閉じたまま黒い瞳はもう見えない君を呼んでももう応えてはくれないのだ家族が一人永遠にいなくなるわずかな日々を思い出と一緒に土に帰す...

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この病室の窓から。

この病室の窓から踊る君の姿を眺めていた明るい空の下で快活に飛び跳ねる若き命の塊よ脈打つ心臓は明日の未来を夢見ているかその笑顔は純粋な心を育むエネルギーになっているか若く明るい健全な魂よその場所から化石のように病んだこの身体が見えるだろうかくすぶった灰色の空のような悲しみを握りしめてこの病室の窓から放り投げている私の姿が――...

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カルテ(未刊詩集・風のカルテより)。

診察室で主治医がデータを黙々と書き込んでいく最初は一枚の薄いペラペラの紙切れがいつのまにか年輪を重ねた樹木のように育っている私の カルテ過去の傷が積み上げられて今の私を育てて来たのです※病院外来での検査結果が思わしくなく、立ち直るのに時間が掛かってしまいましたが、何とか復帰致しました。心配をお掛けした事をお詫び致します。...

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君のいた夏。

手すりをよじ登ると君の痕跡があった空を掴むためにここを登ったの?そうじゃないよね君は生まれ変わりたかったただそれだけのこと夏はもう終わったけれど君のいた夏は永遠に終わらない ※病気を苦に自ら命を絶ってしまった友人に捧げた鎮魂歌。 初掲載:2012年9月29日 午前0時32分17秒。...

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あなたへ(亡き母に捧げる)。

あなたの胸に抱かれて眠ってみたい豊かな乳房を抱えたあなたのかぐわしい香りに包まれて途切れぬ夢の中で戯れて幸せなひと時をたっぷりと味わってみたいこの世で叶わぬ想いをこの詩に託して天国の何処かにいるあなたへ届けと思いながら僕はあなたの乳房を吸ったのですか?あなたは僕を抱きしめたのですか?※9月8日は母「雪子」の命日。福島の地で自ら命を絶った。享年28歳。...

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天国の涙(未刊詩集より抜粋)。

空が涙の池になりそこに笹舟を浮かべて遊ぶのですおまえの小さな魂乗せてふーっふーっと吹いてさあ天国の涙で出来た池の周りを一周しておいでそうしてまた我が家に戻って来ておくれ ※飼っていたオカメインコの『クック』が医療ミスで落鳥した時、娘から『クック』の為に詩を書いて欲しいと頼まれ、その場で即興的に書き上げた作品。 広島の土砂災害で犠牲になった方々のご冥福をお祈り申し上げます。 初掲載:2012年7月1...

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最後の合図。

この街の少し先に君の家があったね今は家族の残り香だけで来る人を拒み始めて佇んでいるもう 帰る場所がないんだね行く当てのない子猫のようにビルの林で迷子になる戻れない時間と消えてしまった約束の中で僕は君に最後の合図を送った...

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懺悔の雨。

空が思い切り泣いている枯れた少年の心がひび割れて砂漠の中に立ち尽くす母の涙が雨になり懺悔の雨が降り注ぐ降っても降っても少年の心の乾きは癒せないてるてる坊主が軒下で雨が止むのを待っていた少年の変わりにずぶ濡れのてるてる坊主が待っていた※2007年3月、千葉県市川市で起きた『英国人女性殺害事件』で逮捕された市橋達也容疑者をモチーフとして書き上げた詩。市橋受刑者は現在、無期懲役の刑に服しているが、獄中で...

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池の主(未刊詩集より抜粋)。

蓮華寺池で釣りを楽しんでいた大物が釣れるといいなだけどこの松の木の下はまずいだろうこの松の木に登って池に落ちて死んだ子がいるんだぜいやあ 大丈夫さ蓮華寺池には昔から主が棲んでいる大きな白い鯉だ僕はこの目で見たことがある水面をすれすれに泳ぐ姿をねたぶんその死んだ子は池の主が救ってくれたのさ ※私の故郷、藤枝市にある大きな池。空から眺めると金魚の形をしている。子どもの頃、この池で釣りを楽しんだり探検ご...

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