Archive2012年12月 1/1

ホームランに花束を。

 師走の冷たい風が肌を突き刺し吹き抜けて行く。今年も余すところ数日となり、来年に向けて希望のカウントダウンが始まろうとしている。 そんな時、海の遥彼方から届いた一報は、冬将軍の到来を思わせるような「松井秀樹引退」、それは一つの時代が終を告げる鐘でもあった。 米国時間12月27日(日本時間28日)、国内では街の至る所で仕事納のサラリーマンやOLたちの忘年会などで賑わっていた。 クリスマスの余韻を漂わ...

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乾きすぎた女。

アスファルトを叩く雨が囁きを呑み込んだ雨に潤む路面に気を取られたまま曖昧な返事を繰り返すどんなに優しい言葉もどんなに温かな微笑みもわたしの心は拒んでしまう乾いた街は雨に濡れ輝きを見せるけれど乾きすぎた女は他人の愛ではもう輝かない...

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酒と涙のクリスマスケーキ。

 貧困は、時に子どもの心を傷つける。わたしはそれを子ども時代にうんざりするほど味わって来た。昭和30年代にクリスマスプレゼントの慣習が日本に存在したか知らないし、記憶として残ってもいないが、唯一それらしい出来事を今になって思い出す。 泥酔しきった父が真っ赤な顔をして「とし坊、土産」と差し出した小さな白い箱の中身は、酒臭いイチゴのショートケーキだった。 わたしはそれが嬉しくてたまらず、涙を浮かべなが...

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冬枯れて…。

西に沈む夕陽が、わたしの影を四角に作る。外が冬だったことに、気づいてわたしは驚いていた。わたしの部屋には、季節が訪れない。残り少ないカレンダーだけが、冬をわざとこじつける。くちびるを突き出して息を吐く。それは白く色付いて、寒さに震えて凍えそう。長い間、忘れ去られたクリスマス・ツリーが、一斉に輝き出す。深い夜の淵に腰掛けて、嘘を数えてみたりする。するべきことなど、何一つありもしないのに。暗いばかりの...

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北朝鮮の限りなき野望と現実。

 核とミサイル依存症の国「北朝鮮」から、不意打ちの長距離弾道ミサイルが一発フィリピンの方角に向けて発射された。 今回のミサイルも前回4月の時と同様に、人工衛星と言う肩書きを付けての打ち上げだった。前回の失敗を是が非でも取り返すべく、当局は持てる技術の全てをミサイル一発(約700億円)に賭けていた事は周知の通りである。 金正日総書記の「先軍政治」を継承すべく金正恩政権は、父親の「遺訓」である「核・ミ...

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蛍の啼く夜に。

蛍を捕まえて来てと君が泣く今は冬だからと君の傍らに寄り添いなだめてみるがそれでも君は蛍を捕まえて来てと涙で訴える冬の瞬く夜に出て夏を探しに出かける冷たいベッドに沈む君のために蛍を探しに出かけてみる凍てつく空と枯れた地上の間に埋もれた夏を見つけるためにそうしないと君が蛍になってしまうから蛍の啼く夜にはもう帰りたくないからね...

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出版社の選択は慎重に。

 年間およそ7万冊もの書籍刊行ラッシュの現代、それに対して日本の書店数は今年に入り2万5千軒程度にまで落ち込んでいる。 デジタル書籍の到来、携帯やインターネットの普及も手伝って、本が売れない時代になり、小さな書店は生き残れず店を畳んで行く、これが現状である。 書店の立場から見れば当然限られたスペースに売れる本をどう設置しようか毎日迷っているのである。著名な作家の本でも出足が悪ければ一週間で返本とな...

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歌舞伎の概念を覆した男。

 12月5日、体調を崩しベッドに臥せっていた。昼時、テレビの電源を入れると飛び込んで来た「中村勘三郎さん死去」のニュース。 まさかとは思ったが、それは紛れもない事実であった。中村さんは確か12時間にも及ぶ食道がんの手術も成功し、回復の途上にあった筈である。 そのような大手術にも耐え抜く体力と気力を持ち合わせながら何故、亡くなってしまったのかとその死因について疑問が残るばかりであったが、ニュースの詳...

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ドライフラワー。

ゴミ集積所から拾って帰った紅い薔薇都会暮らしのわりに開き直れず塞ぎ込んでいる頭の中で夢が膨れ上がる茎はそれを支えきれない叶えられない夢はひとひら ひとひら散っていく残り少ない夢を数えて暗い部屋の隅語りかける水もなく次第に乾いていく悲しみは腫れぼったい刺に姿を変え夢を叶えることもないまますっかり乾ききってしまった...

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力道山の真実(小説「届かなかった僕の歌」幼少篇より抜粋)。

 暫く帰って来ない父の行き先は府中刑務所だった。これが五回目となる服役。父のもう一つの家でもあるような刑務所ではもう常連。所員が言った。 「あれ、あんたまた来たんかい、懲りないのう」 同部屋で一緒だったのは力道山を刺した極道「村田勝志」だった。 「俺はちんぴらだけど、あんたは凄いな」 「好きでやった訳じゃないのさ」 「どうしてやっちまったんだい?」 「正当防衛っていやあ聞こえはいいがな」 刺した相...

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