終戦

 1945年(昭和20年)1月9日、神戸信夫(父13歳)は、自宅近くにある蓮正寺の境内で日向ぼっこを楽しんでいた。
 戦時中の正月がどのようなものであったか定かではないが、食料の配給下では満足に腹を充たす事など皆無ではなかったかと思う。
 藤枝では有数の資産家だった神戸家にとって見れば、戦争の影響による衣食住に困窮する事は全く無かったが、家族二人が南方へと出兵し帰らぬ人となっている。この二人の戦死は後に神戸家衰退の大きな要因となった。
 日当たりの良い境内に胡坐をかき、高級もののタバコに火を点け一点の陰りもない正月の空を仰いでいた。この頃から不良少年だった信夫は町内のガキ大将で有名だった。
 朝の静寂を切り裂く空襲警報が町中に鳴り響き、青い空を恐怖で震えさせる。神戸家はお稲荷さんを祭っており、その裏側に家族全員が入れる防空壕があった。
 藤枝市(旧藤枝町)の片田舎にも米軍爆撃機B-29が飛来したのである。東から西に飛来した1機のB-29は5発の爆弾を投下し去って行ったが、その目的は単に機体を軽くするためだったという。
  この空爆で藤枝町役場の職員十数名が犠牲となった。一発の爆弾が落ちた場所は、藤枝市役所の直ぐ脇であり、そこは戦後埋め尽くされることもなく戦争の傷痕として残されたが、いつしか湧き水によって鯉が数十匹泳ぎ、夏にはここで水浴びを楽しんだり、釣りをする子どもたちの憩いの場へと変わっていった。
  子どもの頃、父からこのような戦争の話をよく聞かされたが、当時(昭和30年代)の子どもたちの間で流行っていたのは『戦争ごっこ』。ただし、太平洋戦争 ではなく『日露戦争』『日清戦争』が遊びのモチーフになっていた。負けた戦争より、勝った戦争で遊べと大人から言われていたのかも知れない。
  そしてやはり子ども時代によく口ずさんだ歌が『軍歌』だった。『ラバウル小唄』『麦と兵隊』などは強く印象に残っている。そしてもう一曲が『酋長の娘』、こちらは軍歌ではないと思われるが、当時のわたしはこの曲も軍歌だと認識していた。詞の内容がそのように思えたのである。
―わたしのラバさん 酋長の娘 色は黒いが 南洋じゃ美人―
 この歌は『酋長』の部分が好ましい表現ではないとされ放送禁止歌になっており、現在歌われることはない。
 今年67回目の終戦を迎えたが、この戦争に直接間接を問わず多くの人間が関わって来た。人によっては、いまだ戦争を終わらせることが出来ず、悩み苦しんでいる人たちも多い。わたしたち現代人の生活の中にも戦争の影を垣間見ることがある。
  子どもたちがプールや風呂場で戯れ遊ぶ時に使う『水鉄砲』や冬になれば厚手のコートを羽織って外出するが、これは軍服がモチーフとなって今に至っている。 人間同士が殺し合う戦争は絶対に避けるべきであるが、それ以外にも戦争と呼べるものは多くあり、いまだに『万歳』を叫ぶ日本人がわたしには理解不可能。
 戦争からわたしたちは一体何を学んで来たのか、本当の戦争の姿は何処にあるのか、もう一度歴史を振り返りつつ、後世に戦争の有り様を残し伝えて行かなくてはならない。

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俊樹
Posted by俊樹

Comments 17

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Mamu  

貴重なお話しをありがとう。何回も読んでからまたお返事するね♪

2012/08/15 (Wed) 00:38 | EDIT | REPLY |   
向日葵姫  

猫の写真がかわいいですね。
私は大の動物好きなんです。
私も猫が憧れで、犬も飼いたくてたまりません。
更新頑張ってください。
乱文失礼致しました。

2012/08/15 (Wed) 08:21 | EDIT | REPLY |   
Neutralizer  
ご無沙汰しております

 久々にコメントさせていただきます。
 あの戦争は終わっていないというのは同感ですね。例え、歴史上では終わっていても人々の社会心理上ではいろいろな問題を抱えているわけです。
 そこにあの竹島問題が表沙汰に出てきているわけです。それに加えて従軍慰安婦や植民地支配など朝鮮・中国の人々への仕打ちに対する清算を我々はまだ済ませていません。情けないことに言葉だけで終わらせて後は風化させるに任せてしまってますね。しかも、『愛国心』を盾にして正当化してしまっている愚か者が未だにいるんですから…。

2012/08/15 (Wed) 08:26 | EDIT | REPLY |   
moko☆モコ  

深く大切なお話ありがとうございます☆

猫さんのお写真かわいいe-266
猫さんにしたら…という感じでしょうかe-267
ピッタリ!!

2012/08/15 (Wed) 12:34 | EDIT | REPLY |   
桜姫  

はじめまして。
桜姫と書いて、(さくらひめ)といいます。
よろしくお願い致します。

以前、友人がお世話になりましたので、
勝手にリンクさせて頂きました。

今後とも訪問させて頂きます。
乱文失礼致しました。

2012/08/15 (Wed) 13:53 | EDIT | REPLY |   
俊樹  
Neutralizer さん

まったくその通りで、月日を重ねても拭えない過去が現実に存在してますね。

>  久々にコメントさせていただきます。
>  あの戦争は終わっていないというのは同感ですね。例え、歴史上では終わっていても人々の社会心理上ではいろいろな問題を抱えているわけです。
>  そこにあの竹島問題が表沙汰に出てきているわけです。それに加えて従軍慰安婦や植民地支配など朝鮮・中国の人々への仕打ちに対する清算を我々はまだ済ませていません。情けないことに言葉だけで終わらせて後は風化させるに任せてしまってますね。しかも、『愛国心』を盾にして正当化してしまっている愚か者が未だにいるんですから…。

2012/08/15 (Wed) 15:11 | EDIT | REPLY |   
小野哲  
どっちもどっちなんですけどね

 我が盟友のところでもコメントをしてくれたようなので私も今回のことでコメントをさせて頂けませんか?
 要するに韓国も韓国なんですよ。江戸の敵を長崎で討つような下品な真似はしないで欲しいんです。それで迷惑なのは日韓両国で活躍しているサッカー選手や芸能人じゃないですか。
 さぞかしサガン鳥栖の尹晶煥監督、金熙虎コーチ、金根煥選手、呂成海選手、金民友選手は困惑しているでしょう。「政治の場をスポーツに持ち込まれてどうするんだ」ですよ。
 さらに問題なのは第三極としてクローズアップされる政治家連中がいずれも戦争責任を不当に居直る愚か者だということなんですよ。そんな政治家を選ぶ段階で終わっています。
 この問題を日本サイドで解決するというなら過去の戦争責任を皇室と日本政府が連名で認めて謝罪することです。野田自称首相と現天皇が「我々が悪かった」と一言言えば済むことです。

2012/08/15 (Wed) 15:35 | EDIT | REPLY |   
ココうさ  

私の母は86歳です。
私も戦争の話を子供の頃から
よく聞いて育ちました。
戦争はしちゃいけません。

2012/08/15 (Wed) 18:34 | EDIT | REPLY |   
kabocha  

厚手のコート・・・
祖父が母にかけたコートは
まさしくそのコートだったのかもしれません。
分厚いコートと言ってました。
普段は戦争のことを忘れている母ですが、
花火のナイアガラの滝を見ると空襲を思い出すと言ってました。

花火ひとつにも悲しい思いがあること
私たちは忘れてはいけないって思いました。

コメありがとう(^^)

2012/08/15 (Wed) 19:39 | EDIT | REPLY |   
キノ  

戦争について、今一度、深く考えさせられる記事をありがとうございます。
どれだけの年月が経っても癒せない傷というものがあるという事実、戦争が落とした闇の深さは果てしないですね。
過去を風化させず、未来の平和につなげていくことが大事だと思いました。

2012/08/15 (Wed) 20:26 | EDIT | REPLY |   
はづき  

はじめまして。
コメント、ありがとうございました。

言葉だけでは足りないと
さっき、写真もたしました。
よろしかったらご覧くださいませ。

同種で殺し合うのは、ヒトくらいのものです・・・

2012/08/15 (Wed) 20:30 | EDIT | REPLY |   
ひまわり母ちゃん  

コメントを頂きまして、ありがとうございました。

万歳・・・
私も昔から違和感を持っておりました。

それから、首脳をはじめ、
政治家が靖国を参拝することへの過激な反応も、
私には理解ができません。

2012/08/15 (Wed) 21:08 | EDIT | REPLY |   
二階堂 新  
詩人と散文派フリーライターの違い(笑)

 ブログ執筆とツイッターで多忙のため、ご無沙汰していました。ところで女流詩人とは、仲直りしたのかな(笑)   
 本日、8月15日は、「終戦の日」。明日、私はある場所へ行ってまいります。それでは、また。

2012/08/15 (Wed) 21:31 | EDIT | REPLY |   
俊樹  
二階堂 新さん

たまにしか訪問してくれないのがちょっと(*^。^*)
女流詩人さんとは仲直りしましたよ。

>  ブログ執筆とツイッターで多忙のため、ご無沙汰していました。ところで女流詩人とは、仲直りしたのかな(笑)   
>  本日、8月15日は、「終戦の日」。明日、私はある場所へ行ってまいります。それでは、また。

2012/08/16 (Thu) 10:10 | EDIT | REPLY |   
路傍の石  
戦争

拝読させていただき、特に最後の言葉が心に染みました。
 戦争から人は何を学んだでしょう。

 一つには、学ぼうにも、学校教育ではそれを避けて通った節がありますね。

 だから、戦争、原爆等から学ぶものが少なかったのではないでしょうか。

 もう一つ。戦争は儲かるビジネスだということ。

 これも、一部の人なのですが、歴史から学んだことではないでしょうか。

 こう言う人。外見は人間ですが、おそらく鬼ではないかと思います。

 最後になりましたが、昨日のコメントありがとうございました。

2012/08/16 (Thu) 13:45 | EDIT | REPLY |   
Hiro  


こんばんは。
ご訪問、ありがとうございました。
忙しく、お伺いするのが遅くなり、失礼しました。

空を見上げるが好きなのですが・・・

当時終戦の知らせを聞きながら、
静けさを取り戻した空を見つめていた人達には、
その青さは、あたたかだったのか、それとも冷たく感じるものだったのか・・・
ふっと、考えることがあります。
一年に一度ですが、振り返ることは、大切ですね。

2012/08/17 (Fri) 00:18 | EDIT | REPLY |   
shin36a  


リアルな戦争の話ですね

もう昔の話になってるんでしょう

でも正しい歴史は残すべきだと思います

そこから何を感じるかは後世ゆだねるで

2013/08/13 (Tue) 20:48 | EDIT | REPLY |   

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  •  まだ空は青いままか?
  • 終戦記念日です。 まだ世界のどこかで戦争をしている国があるけど、一日も早くなくなってほしいものです。 ツイッターでこんなRTが回ってきました。 玉音放送全文 有名な一文し
  • 2012.08.16 (Thu) 21:58 | 今日の雄叫び