民主党57人の刺客。
自公民による密室の談合と批判の矢面に立っていた消費税増税法案は、賛成363と言う圧倒的な数字を持って可決され、参議院に送られた。
今回の採決で最も注目を集めたのが、民主党内からの反対票、いわゆる『造反者』がどれだけ出るかだったが反対票96の内、民主党からは57人が反対に回った。
これに棄権、欠席者19を含めれば造反者は76となり、離党を示唆している小沢一郎元代表が「よし」と力強く頷いたのもこの数字に満足した結果であるだろう。
これにより民主党は事実上の分裂状態となり、法案そのものは可決されたが野田首相の心中は穏やかではなく、造反者に対し「厳正に対処する」と言う具体性の見えない曖昧な答弁が民主の将来が『風前の灯火』である事を如実に物語っている。
小沢グループを擁護する積もりは毛頭ないが、果たしてこの反対票が『造反』と簡単に片づけられるものだろうか。
社会保障分野の主要政策をマニフェストに掲げ、圧倒的な勝利を自民党から力づくで政権をもぎ取った2009年の衆議院選挙は国民の期待を一身に受けての勝利だった筈である。
政権奪取から3年余りが過ぎ、蓋を開ければ次々とマニフェストは塗り替えられ、『国民との契約』は果たされず政策放棄と言う国民への裏切り行為ばかりが目立って行った。
このような状況を踏まえれば、造反者は賛成票を投じた民主党の大多数の議員たちの方ではないだろうか。つまり国民への造反なのである。
いつの世も常に煮え湯を飲まされるのは国民であり、将来に於いて消費税が20、30%になったとしても、政治家たちの財布が国民の税金によって潤っている以上、彼らにとっては痛くも痒くもない他人事なのである。
迫りくる後期高齢化社会をスムーズに受けれるに当たり、将来的増税は止むを得ない事ではあるが、増税のみが一人歩きしいている現状では国民を納得させるだけの材料も見当たらず、社会保障の全体像すら描けない状況で増税分の使い道に対しても明確な答えは出ていない。
法案に対し賛成票しか認めない、反対票は事実上禁止と言う政党の傲慢なやり方は、民主主義に反する行為であり、投票の自由と言う権利を奪い取る歴史に逆行した暴挙としか思えないのである。
政権交代の大義を大きく捻じ曲げて増税に突き進む野田首相の責任は極めて大きく重い。民意を軽視する野田政権が今後どこまで政局に留まっていられるかは時間の問題であるだろうが、増税反対ばかりをお経のように唱えている議員たちに国民がなびくかどうかは大いに疑問ではある。